リレーメッセージ第9回:西側佳奈さん

滋賀県は広く、ST同士が交流できる機会が多くありません。
「リレーメッセージ」と題し、県下STに自由にお話いただく場を作る事で、滋賀県STってこんな感じなんだ!と繋がる場を企画しました。「よもやま話」が集まり、滋賀県下の現在そして未来のSTへのメッセージとなることを期待しています。
第9回目は、よつば訪問看護ステーションそしてうさぎナースケア南草津の西側佳奈さんにお願いしました。
文面からも暖かい気持ちが伝わってくるような、「滋賀県のST」がギュッと詰まった文章を頂きました。
下記よりご覧ください。

言語聴覚士として働く上で心がけていること
こんにちは。今回いただいたテーマについて、私の経験を通してお話ししたいと思います。私が日々大切にしているのは、「その人の歩みに寄り添うこと」です。背景や働き方は少し変わっていますが、この思いはこれまでの経験の中で育まれてきました。
私はもともと語学が専門で、留学や現地での日本語教師を経験しました。そんな私の転機となったのは、母が脳出血を発症し、重度の失語症になったことです。当時通っていた語学講座に、偶然STさんがおられ、母のことを相談しているうちに、自分もSTをやってみたいと思うようになりました。「本当に良い仕事だよ」というその方の言葉に背中を押され、新しい世界に飛び込みました。
最初に就職したのは、回復期病棟のある病院でした。二年半勤務し、「これから」というとき、事情で退職することになりました。何年か現場を離れ、もうSTには戻れないだろうと考えていた頃、知人から「STを探している」と声をかけられました。訪問の仕事だと聞き、「臨床経験の浅い自分にできるのか」と不安に思いました。さらに、最大の懸念はペーパードライバーであることでした。それでも、「STがいなくて困っている」との言葉に、「私でお役に立てるなら」と、挑戦を決めました。
まずは運転の練習から始めました。一件のみの訪問だったので、自宅と職場、職場と訪問先の道のりだけで済んだのが幸いでした。平和堂の屋上で何度も駐車の練習をし、事前に訪問先へ下見にも行きました。そして、初めて職場の車のハンドルを握った日のドキドキは、今でも忘れられません。
運転にはあまり向いていないようで、職場に何度もご迷惑をかけましたが、在宅(訪問)の魅力にはどんどん引き込まれました。なかでも、利用者様が自宅という「いるべき場所」にいらっしゃることが最大の魅力です。だからこそ私は、「利用者様の日常の一コマに、そっと溶け込める存在でありたい」と思うようになりました。
訪問では、関わりが長年にわたることもあります。季節の話や世間の出来事、その方の人生の思い出話…。こうした日々の断片が、何層にも積み重なっていきます。けれど、ご本人の急な入院やご家族の事情などで、別れはたいてい突然訪れます。それでも、ご一緒した時間は私の中に残り、また新しい出会いへの糧となります。
その後、小学校で母語・日本語支援員として働く機会も得ました。急きょ日本へ避難してこられた方々の存在を知った際、自分が以前学んだ言語の背景と重なる部分があり、「何かお役に立ちたい」と思いました。そこでボランティアに登録したところ、仕事としてご依頼いただいたのです。学校教育の知識はありませんでしたが、「やってみたい」と、新しい現場に飛び込みました。
教室でのお子さんたちとの関わりは、「人に寄り添うこと」の本質をあらためて考える機会となりました。お子さんが純粋に信頼の目を向けてくれたとき、「この気持ちに応えたい」と心から思いました。そして、相手に心を開いてほしいと願うときには、自分から相手を信じようとする姿勢こそが出発点になると知りました。こうして築かれる信頼関係は、STとしての在り方にも共通すると気づき、「私はやはりSTだ」と自分の軸を再確認しました。
そして、訪問の中で「オーラルフレイル」の概念をもっと広めたいと感じていた頃、地域リハビリテーション派遣事業の一環で、介護予防講座の講師を務める機会をいただきました。ところが、百歳体操の教室で、「言語聴覚士をご存じですか?」と問いかけると、なんと首を横に振る方ばかりだったのです。
その体験から、今回のお話をいただいたとき、「まずはこの場所からでも、何かお伝えしたい」と考え、お引き受けしました。
振り返ると、その時々で「声をかけていただいた場所」に一歩踏み出してきました。それが結果として、次の扉へとつながっていたのです。現在は二つの訪問看護ステーションで、少しずつお仕事をいただいています。これからも学び続けながら、「その人が自分らしくいられる場所」で、その歩みに寄り添えるSTでありたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
補足:
写真は、趣味と職業の融合です。フルートを吹くことからも、STとしての学びを広げられます。
書籍『フルートと脳のおはなし ― 音楽家のための脳神経生理学入門』
鈴木則宏 著 春秋社
よつば訪問看護ステーション
うさぎナースケア南草津
西側佳奈


