(活動報告)嚥下調整食の試食会参加
過日、嚥下調整食を複数試食できる機会を頂きました。学びや発見が多くありましたので、この場をお借りして報告致します。
嚥下調整食って?
私達人間は、食べ物を認識し、噛んで飲み込み易い性状に整え、口から喉、食道から胃へと送り込みます。この過程を「嚥下(えんげ)」と呼びます。ところが、加齢や脳卒中、神経難病などの原因によってこの過程のどこかに障害があり、うまく咀嚼や嚥下ができなくなってしまうと、通常の食事を食べることが困難になってしまいます。これを「摂食嚥下障害」と呼びます。
そのため、舌で簡単に押し潰せる、水分にとろみをつけて飲み込みやすいようにする、などの調整が必要となります。
こうした摂食嚥下機能に配慮された食事を「嚥下調整食」といいます。
言語聴覚士(ST)の役割
摂食嚥下障害の概念は幅広く、加齢性、ゴックンが上手くできない機能的障害、栄養・水分不足、片麻痺の影響で上手く食べ物が口に運べない事や、認知機能低下の影響で食べ物を食べ物と認識できない事など、多岐に渡ります。その為、なにがどう摂食嚥下に影響しているかを見極める必要があり、その方にとって適切な食べ物は千差万別となります。適切な対応は、その方の摂食嚥下機能を代償し、誤嚥などのリスク管理につながります。
一方、過剰や的外れな対応は、そもそも効果がなかったり、食事への意欲が低下してしまい、十分な栄養が摂取できなくなる可能性があります。
そのため、その見極めを行うのが私達言語聴覚士(ST)の役割の1つです。
試食内容
今回試食させて頂いた内容です。
・なめらかおかず 筑前煮風
・なめらか定食 八宝菜
・ムーミーくんのおかずセット ぶりの照り焼き
・優しくラクケア ビーフカレー味
・スムースグルメパンセット いちご&バター
・そふまる やわらかうどん
・らくらく食パン コーヒー牛乳
・そよかぜのやさしい食感 豚肉の生姜焼き弁当
・アイート チキン南蛮
・せんしょう やわらか京料理
・口福膳 うなぎ
・ちそうごはん 鯵のひものごはん
・ちそうごはん 鱒ずし
・ちそうごはん 鯛めし
・岩塚製菓 きなこ餅
・コメダ珈琲 とろみコーヒー
・炭酸とろみ つるりんこしゅわしゅわ
感想
まずは、どの商品も咀嚼が難しくなった方でもなんとか美味しく食べれるよう工夫が凝らしてあり、企業の思いを強く感じました。また、ほんの数年前に比べても種類や献立が豊富になっており、驚きました。
次に、実際に食べ比べてみて学びがありました。「見た目」も重要だという事です。食べ慣れた家庭の味が好ましいように、パンにはパンの、ぶりの照り焼きにはぶりの照り焼きの、押し寿司には押し寿司の味や食感などを期待し、その予想したイメージが返ってきて満足感があり、美味しさに繋がるのだと感じました。
また、これは職業病ではありますが、「注意点」もあるなと感じました。確かに性状は歯茎や舌で潰せるのですが、離水といって、オレンジを噛みしめると果肉と果汁に別れてしまうように、固形と液体がmixされた食事形態になってしまう事を認めました。咀嚼ではなく喉のゴックンが苦手な方では、おそらく飲み込みの前にむせてしまう事が予想されます。
最後に「反省」もありました。どれも大変美味しいのですが、外食を毎日食べるのが辛いように、やはり家の味が1番なのだと感じたからです。私はリハビリをメインに行う回復期病院に所属しているのですが、退院支援を見直していこうと思います。いつもの家庭の味を、工夫してその方の障害特性に合った性状にできるよう、ご家族やご本人への説明を所属STが同レベルで出来る、そんな仕組み作りをしていきたいと感じました。
さいごに
日本程バラエティーに富んだ、豊かな嚥下調整食のある国はないと言われています。
しかし、これだけ頑張ってメーカーやお料理屋さんなどが嚥下調整食を作っているのですが、専門職がその情報をもっておらず、したがって紹介できず、必要な方に情報が届いていない事を残念に思います。
まずは私たちSTが
・どんな嚥下調整食が日本にあるのか
・どのように進化しているのか
知る必要があるのだと、自分自身ふりかえった貴重な経験でした。
お読み頂き、ありがとうございました。