リレーメッセージ第6回:湖南地域 Kさん
滋賀県は広く、ST同士が交流できる機会が多くありません。
「リレーメッセージ」と題し、県下STに自由にお話いただく場を作る事で、滋賀県STってこんな感じなんだ!と繋がる場を企画しました。「よもやま話」が集まり、滋賀県下の現在そして未来のSTへのメッセージとなることを期待しています。
第6回目は、湖南圏域のKさんにお願いしました。
5年目STさんの思いが素直に伝わってくる言葉で、私の心に響きました。
多くのST、そして学生さんの心に届くと感じています。
下記よりご覧ください。
リレーメッセージ:第6回
STの仕事に悩んでいる方へ
~少しだけ楽になるヒント~
初めまして。私は、回復期病院で働く5年目のSTです。
主に脳血管疾患の患者さんに対し、高次脳機能障害、失語症、構音障害、嚥下障害等のリハビリを行っています。今回リレーメッセージの機会をいただき、何を書こうか随分悩んだのですが、せっかくの機会なので、自分自身のことを書けたらと思います。STという仕事が気になっている方や、同じような悩みを抱えているSTさんの励みになるかはわかりませんが、こんな人もいるんだなあ、こんな考え方もあるんだなあ、と知ってもらえたらと思います。
当たり前のことですが、STというのはコミュニケーションを武器とする仕事です。
ところがどっこい、私はコミュニケーションが不得手です。子供のころから内気な性格で、友達も多い方ではなく、集団に馴染むのも苦手でした。そのうえ、ぐうたらで、隙あらばゴロゴロしていたいような人間です。STを目指して大学へ入った後も、できることなら働きたくないと思っていました。学生時代から、様々なことを「しんどい」「憂鬱だ」と感じがちで、社会人になったらきっとずっとしんどいんだろうな、と考えていました。
STになりたいけど働きたくない、というのは致命的です。STは資格であり、職業で、働かざるものはSTになり得ません。「このままやったら、国試に受かっても資格持ちのニートになるんちゃうか」と、親にすら言われた私に、大学時代の恩師がくれた言葉があります。
「これまではしんどかったと思うけど、臨床に出て患者さんと向き合いはじめると、自分のことを考えなくて済むから、意外と長く続くと思う」
「働くというよりも、目の前の患者さんが困っていて、何とかしてあげたい、良くしたいと思って頑張る日々が続くだけ。ついでにお金がもらえると思えばいいのよ」
恩師の言葉を聞いて、漠然とした「いやだなあ」という感情が無くなり、働くことを前向きに考えられるようになった気がします。その後、私は無事重い腰を上げて就活をして内定を頂き、国試に合格し、STになることができました。
リハビリの対象となる患者さんは、病気をきっかけに本来の日常生活から切り離されてしまった方々です。
入院生活そのものにも多かれ少なかれストレスを感じているうえに、様々な後遺症を抱え、それに困っていたり、あるいは困るということに気づいていなかったりします。臨床の中では上手くいかないことの方が多いかもしれませんが、恩師の言うように、目の前の患者さんを何とかしたい、良くしたい、と思っているうちに、なんと、5年近くが経っていました。まだまだ新人に毛が生えたような未熟者で、先輩や同僚に助けられてばかりですが、向いていないし、きっと長続きしないと思っていた私にとっては、5年目を迎えたというだけでも、自分の想像を超えています。この先も超えていきたいと思います。
最後になりますが、私はSTが好きです。働くことは今でもそんなに好きではありませんが、この仕事だからこそ、なんとか働き続けられているのだと思います。今でも自分のことをSTに向いているタイプだとは思いませんが、STという仕事を魅力的に感じた人なら誰でも、この仕事にやりがいを見つけて続けていく底力があるのではないか、と思えるようになりました。
STという仕事が気になるけれど自分には向いていないかもと思っている人や、STとして働きはじめたけど何かしんどいなあと感じている人が、これを読んで、「なんとかなりそう」と思ってこの道を進んでくれたら嬉しいです。
拙い文章を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。