リレーメッセージ第10回:清水奈央さん

滋賀県は広く、ST同士が交流できる機会が多くありません。
「リレーメッセージ」と題し、県下STに自由にお話いただく場を作る事で、滋賀県STってこんな感じなんだ!と繋がる場を企画しました。「よもやま話」が集まり、滋賀県下の現在そして未来のSTへのメッセージとなることを期待しています。
第10回目は、滋賀医科大学附属病院の清水奈央さんにお願いしました。営業畑出身の「まず動く」姿勢を貫く実践派STです。
下記よりご覧ください。

STとして壁にぶつかった時、私がしたこと
はじめまして。私は言語聴覚士として働き始めて、今年の4月で10年目を迎えました。
今回いただいたテーマについてお話しする前に、私が言語聴覚士を目指したきっかけを少しお話ししたいと思います。
私はSTになる前、大学卒業後は旅行会社の営業として京都市内を駆け回っていました。
大学時代には友人に誘われて手話サークルに入り、聴覚障害のあるサークル員と手話で会話をする楽しさと難しさを知りました。
その経験もあり福祉への関心が高まり、営業職時代には会社に内緒で福祉施設へ営業に行くこともありました。
しかし、実際に現場へ足を運ぶと、障がいのある方々の希望と旅行業界との間には大きなギャップがあることを痛感しました。
「営業として提案するだけではなく、現場で旅のお手伝いをしたい」。
そう思い直した私は、まず語学力を身につけようと1年間カナダへワーキングホリデーに行きました。
ここでも母国語以外でのコミュニケーションの楽しさや難しさを実感し、帰国後は希望していた添乗員として働き始めました。
その頃、旅行業界ではユニバーサルツーリズムが流行りはじめ、社内でも少しずつ研修が始まりました。
「障がいがあっても旅に出てほしい」、と試行錯誤しながら提案し、実行できるようにと取り組みましたが、なかなか理想と現実のギャップを埋めることは難しいと気づきました。
今思うと、勝手にイメージを膨らませて、勝手に理想を押し付けていたようにも感じます。
「いっそのこと医療や障害について学んで、もっと根本から何か役に立つことができないか。」と考え、もともと手話や聴覚障害に興味もあった私は、言語聴覚士を目指し専門学校への入学を決めました。
専門学校で過ごした2年間は、人生で一番机に向かって勉強したと言える時間だと思っています。
そして今でも気軽に相談できる仲間と出会えた、かけがえのない場所でもありました。
さて、本題の「STとして壁にぶつかった時、私がしたこと」ですが、振り返ってみると、壁にぶつかったと強く感じたことは、実はあまりありませんでした。
「あの時は悩んでいたな」と思う場面はいくつかありますが、そんな時、私が実践してきたことは、「とりあえずやってみる。」「まずは行動する。」です。
臨床ではわからないことばかり…時間はあっという間に過ぎていきます。
今は急性期の成人臨床、一部小児の外来診療、ときどき耳鼻科での聴力検査等の業務に携わっています。
1日1日が過ぎるのはあっという間で、自分が納得のいくまで調べることができないことも多いです。
そこで、難しい症例があれば先輩に相談する。症例検討会で意見をもらう。
STだけではなく、医師や看護師、PT・OTなど他職種にも相談する。
相談するためには、症例や自分の考えを整理し、相手に伝わるように言語化する必要があります。
この過程を繰り返すことで、症例を考える力が身についたように思います(まだまだですが…)。
そして、自分一人では思いつかなかった視点やアプローチを知ることができ、新たな方法を考えるきっかけにもなっています。
就職してから転職を経験していない私は、急性期病院での臨床しか知りませんでした。
他の病院や施設のSTさんがどのような考えで患者さんと関わり、どのような支援を行っているのかを知る機会も少なく、「他の施設ではどうしているのだろう」「急性期との違いは何だろう」「他のSTさんともっと話してみたい」と感じるようになりました。
その思いから参加したのが、地域リハビリテーションの研修や失語症意思疎通支援者としての活動でした。
他施設のSTや多職種の方々と関わる中で、施設ごとの役割や支援の考え方にはさまざまな違いがあることを知りました。
新しい視点や価値観に触れることで、自分の臨床を見つめ直す機会となり、少しずつ臨床の幅が広がっていったように感じています。
また、障がいを持ちながら地域で生活されている方々の話を聞くことで、自分が今行っているリハビリの先を考えて関わることができているように思います。
STになる前に旅行業界で働いていた経験も、今の臨床に生きています。
どんな相手ともコミュニケーションを取ること、まずは相手を理解しようとする姿勢。
こうしたホスピタリティの考え方は、患者さんやご家族、多職種と関わる中でも大切にしています。
気がつけば、STになって10年が経ちました。
それでも「まだまだ知らないことばかりだな」と日々感じています。
だからこそ、学ぶ姿勢を忘れずに「とりあえずやってみる」の精神で、まだまだいろんなことに挑戦していきたいです。
患者さんやご家族、他職種とも寄り添いながら、STの輪も広がり繋がっていくといいなと思っています。
この度は貴重な機会をいただき、また、最後までメッセージを読んでいただき、ありがとうございました。
滋賀医科大学附属病院
清水 奈央


